【駆け引き】公佳
 

 

 

 

【駆け引き】side:公佳

 


「何これ・・・」

ショッピング中見つけた、シーズンオフで特売になっていた代物。

・・いいかもしれない。

よし。即決して購入してみる。

 
「ただいま」

帰ってきた。

「あ。おかえり〜」

疲れた顔、してるなー。

スーツがよれてましてよ。お兄さん。

なんて、爆笑しながら思う。

「それ、面白いのか?」

テレビに映っているのは今人気のバラエティー番組。  

「ん〜、ううん。別に」

ノリで笑えるけど・・・心底面白いってわけでもない。

「恭介、ご飯出来てるけど食べる?」

「おう。食べる食べる」

いつのまにか、夕飯は私の係になった。

自分からやってんだけど。

やっぱり、居候?の身としては、何かやらないと。

前に、「お金払う?」って聞いたら断られたし。

出来るだけ食材は私が買うようにしてるけど、いつのまにか冷蔵庫に食材がそろってたりする。

結局どっちが多く払ってるかなんて分からないし、お互い気にしてないけど。

とりあえず、夕飯くらいはね?

「いただきます」

「召し上がれ」

恭介はほんとにおいしそうに食べてくれる。作りがいがあるってものよ。

さて、切り出すか。

「ねえ、恭介、明日休みだよね?」

さあ、ここからが勝負!

「そうだけど?」  

「じゃーさ、」

そんな顔、しないでよ。

「嫌だぞ」

早っ。

「まだ何も言ってないんですけど・・・」

「どうせ買い物に引っ張られるんだろ?そんなのごめんだ」

あ。まだ根に持ってる・・・。

「ちがうわよ。失礼な」

前の休みはさんざん連れまわしたしなあ。無理ないか。

でも、今回も負けるわけには行かない。

ので、表情を変えてみる。

「・・・じゃあ、何だよ」

好きだな〜。恭介のこういうところ。

不機嫌な顔すると、ちゃんと聞いてくれるとこ。

使いやすくて。

「海、行こ」

にっこり。

「・・・ますます嫌だ」

やっぱり
?でも、押し切る。

「何で〜。いいじゃん!行こうよ!海!」

嫌がられるのは百も承知しておりますとも。

「お前、一緒に行ってくれる相手もいないのか?」

そういや、一度もそんな事言ったことなかったっけ?

「彼氏?いるよ」

・・・言っちゃった。

「でも、休みの日にまでわざわざ会いたくないし」

ほんとのこと。

「一緒に行ったって、何にも楽しくないし」

これも、ほんとのこと。

「会いたくないって・・・。彼氏なんだろ?」

「だって、別に好きじゃないし。だいたい、あいつだって浮気してるし。いいんじゃない?」

好きじゃなくても付き合える。

浮気してても、好きじゃないから気にならない。

まあ、最近はちょっとばかり私の考えも変わってきたけれど。

「とにかく、絶対に却下!ご馳走様。・・・俺、風呂入ってくるわ。」

押された・・・。これだけきっぱり言われちゃ、私の負け?

「ど〜ぞ」

でも、私にはまだ秘策がある。



洗面所からガタッと音がする。

・・・見たな?

壁には海のイラストのクリアポスター、浴槽の中はブルー、石鹸は貝の形。

おまけにおもちゃの魚まで浮かべておいた。

様子を伺っていたら、恭介が洗面所から顔だけ突き出してきた。

「明日、8時起床」

8時・・・。明日寝だめしようと思ってたんだけど。

あえて冷静に言ってやる。

「イエス・サー」

勝った。今回も、私の勝利に終わったようだ。