【雨】  side:公佳

 

ザァーという音が聞こえて、窓の外を見てみたら

雨が降っていた。

・・・恭介、傘持っていかなかったよね。確か。

しばらく考えて、外に出ることに決めた。

買い物をしに。

玄関を出る時、傘を見て、悩んで、少し大きめの傘を一本選んで外に出た。

だって、私は買い物をしに行くんだもの。

玄関を出て、ゆっくり駅に向かった。

 
駅に着いてなんとなく改札口近くの柱に寄りかかる。なんとなく。

電車が一台、二台と通過する。

感情を抑えた多くの顔が目の前を通り過ぎていった。

・・・あ。恭介。

見つけた恭介の顔は他の人と同じように感情を抑えた顔。

当たり前だよね。

それでも、外に踏み出そうとして大降りの雨を見て、一瞬表情が変わる。

おもしろい・・・。

ちょっとして、携帯を取り出して電話する恭介。

どこにかけてるの?私?

そろそろ出て行ってやるか。

「お兄さん、こんな雨の中どこにお電話?」

わざと背後からのしかかる。

「公佳!?」

案の定、驚いた顔。

「なんでこんな所にいるんだ?」

なんでって・・・。

「なんでって、外を見たら雨が降っていたので、買い物にでも繰り出そうかな〜と」

そう。買い物。買い物に来たのよ。

「で、買ったものは?」

「え?」

ぎくっ。

「買い物、行ってきたんだろ?」

「きょ、今日はいいものがなかったのよ」

やばっ。どもっちゃった。

「ふーん。そう」

「な、なによ」

信じてないな。

「サンキュー」

「は?何お礼いってんの?」

「いやぁ。別に」

悔しい。・・・もう、いいや。

「・・・帰ろっ」

「おー」

もう、いいや。

「そうだ。今日夕飯作ってないんだ。たまにはお弁当でも買って帰ろう」

「いいねー」

「いい」って何よ?と思ったけど。

たまには手作りじゃなく、お弁当っていうのもいいなと私も思ったから。

見逃してあげることにする。

たまには、いいかもね。

 

 

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