【思惑】saide:恭介







【思惑】  side:恭介

 

こいつはかなり変わってると思う。

風呂から上がって、俺の部屋でくつろいでいる公佳を見てそう思った。

そもそもこいつと俺の関係は良く分からない。

恋人でもなければ、兄妹でもない。血のつながりなど一切無いし、友人でもない。

公佳について知っている事といえば、名前、工藤公佳。年齢17歳、高校二年生。


・・・そのくらいか?あ。後は制服か。が、俺にはそれがどこの高校のものなのかは分からない。

知る必要もないし。興味も無い。


身元についてはその程度。


性格は、わがまま。だな。

・・の癖に意外と律儀だったりする。料理も上手いし。

「なに?」

「いや。なんでも」

いつのまにか凝視してたらしい。なんとなく気まずい・・・?

気ぃ、取り直してビールでも飲むか。

「いいなー。恭介、私のもとって」

未成年だろ。お前。

ま、自分も人のこと注意できるような経歴を持ち合わせているわけでもないし、今更だし、渡してやる。

「ありがと」

渡してやり、公佳のいうところの極上の笑顔を受け取りながら公佳の座っているソファーに腰掛ける。

この位置もすっかり定位置になったもんだ。


公佳が家に来るようになって3ヶ月くらいか?

だいたい、俺たちの出会いも普通じゃないよなぁ。

思い返してみれば、3ヶ月前のあの日、何で俺はあんなに酔っ払っていたんだか。

きっかけは上司に愚痴言われたとかそんなもんだったのに。

あの日俺は、前後不覚に酔っ払い、ほとんど意識なく家に帰った。らしい。

記憶に無いかららしいとしか言えない。

次の日目が覚めて隣で眠る公佳を見つけた時はかなりビビった。

ビビって、それで・・・終わり。別にどうでもよかったし。

いいけげんだよな。俺も。

起きて、顔を合わせた公佳も、別に変わった態度も見せず当たり前のような顔して朝飯食って、会話して。

で、当たり前のように「また来てもいい?」って聞いてくるから、

俺もそれが当たり前だったかのように頷いた。

その時は、害はなさそうだし、それが自然に感じたし。

・・・普通じゃないよな。

そのまま、なんとなく、ただなんとなく。自然に、こうなった。

公佳も、黙ってりゃ美人だし。

あ。ビール。すっかり忘れてた。思い出して、プルトップに手をかけ、缶を開ける。

そのまま一気に飲む。

「ぷはー。うまいっ」

やっぱ、これだよなー。とか思いながらふと、公佳の方へ目を向けてみる。

・・・・・・・・・・おやじ。おやじがいる。

前言撤回だ。あぐらかいてテレビをみるなんざ、おやじだおやじ。

ふと思う。なんでこいつは家にきてるんだ?家出ってわけでもなさそうだし。

よく家に来る割に、この家の中に公佳の所持品はほとんど無い。

ん?視線が・・・。

「なんだよ?」

「しかえし」

ってさっきのか?

やっぱり変な奴だ。

こいつは何を考えているんだか。





HOME Novels side:公佳