こいつは今、自分は人間であると証明するかのように大声で泣いている。
泣く事は人間だからこそ出きると思いついたからだろう。
「泣く」と言うことを覚えてから、何か少しでも悲しい事があると
こいつはすぐに泣くようになった。
こいつの中では悲しい=泣くとインプットされたらしい。
最近では人間は嬉しい時にも泣くものだと知り、
少しでも嬉しいと思う事があると、覚えたての涙を不器用に、
全身から絞り出すようにして泣くようになった。
俺が気まぐれに菓子を買って帰ってきたくらいで泣かれてはたまったもんじゃない。
たかが¥250でこう泣かれては、もう何もしてやるまい。
と思ってしまう。
こいつは、きっと、いや、絶対に昼のメロドラマを観てこの知識を得たのだろう。
そうに違いない。
あきれ果てて、嬉しそうに泣くこいつに忠告してやった。
「人間は普通、嬉しいときには泣かないんだぞ」
するとこいつはぴたっと泣くのやめて、
俺を見あげてくる。
言われたことを一拍おいて理解して、真顔に戻った。
こいつの人間への道のりは、まだまだ長いらしい。
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