【秘密】  side:公佳

 

 

暗闇の中、息を潜めて恭介が近づくのを待つ。

いつものように。

眠った振りをして。

気づかれないように。

恭介が近づくのを、待つ。

距離が近づき、

唇が―――――――、触れる。

動物にするそれで。

家族のそれで。

毎回初めてのように。

もっと欲しいと思うけれど、私は何も言わない。

反応を示さない。

暗黙の了解だから。

確かめたわけではないけれど、きっとお互い気づいてる。

相手が気づいていることを気づいている。

恭介は、私が気づいていることに気づいていて。

私は、恭介が気づいていることを気づいている。

きっと。

けれど、そのことにはふれない。確かめない。

次の日にはいつもの顔して話すんだ。

何事も無かったかのように話すんだ。

お互い、それなりの経験をしているのに、初めてではないのに、新鮮で。

この微妙な距離を楽しんでいる。

この緊張感。このもどかしさを。

それは、私達の秘密。

誰にも、お互いにも言えない私達の、秘密。

 

 



HOME Novels